楽天グループの楽天証券株式会社(以下「楽天証券」)は、9月4日に、10月28日から楽天スーパーポイントを利用して国内株式(現物)の取引を可能にするサービスを開始すると発表しました。
楽天スーパーポイントは、楽天グループの各サービスを利用することによって獲得できるポイントです。
今回リリースされたサービスは、ECコマース(=電子商取引事業)を事業母体としている楽天グループならではのサービスと言えます。
また、楽天スーパーポイントは、提携しているサービスや店舗などの多さから、消費者にとっては獲得しやすいポイントになっており、今回のサービスによって株式投資を始める人が大幅に増えるとみられています。
ECコマースにおける楽天の競合といえば、Amazonが代表的です。
Amazonにも「Amazonポイント」はありますが、2019年9月現在、Amazonポイントで株式の取引をすることはできません。
この記事では、今回楽天証券によってリリースされた新サービスの概要を解説します。
Contents
楽天スーパーポイントで株式を購入するサービスの概要
最初に、楽天スーパーポイントで株が購入できるようになった業界初のサービスの概要について紹介をしていきます。
ポイント利用の対象
1ポイント当たり1円の購入資金として利用可能で、ポイントを充当できるのは株式の購入代金及び取引手数料です。
株式の購入代金と取引手数料の全額または一部金額のどちらにでもポイントが利用可能となっています。
楽天証券が取扱している市場について
楽天証券は2つの証券取引所の上場株式を取扱しています。
東京証券取引所(1部・2部・ジャスダック・マザーズ)と名古屋証券取引所(1部・2部・セントレックス)です。
サービスの対象となる銘柄
サービスの対象となる銘柄は、現物取引される国内株式の銘柄のみで、これにはPTS夜間取引によって扱われた銘柄を含みます。
その他、ETF銘柄(株価指数連動型投資信託受益証券)及びREIT銘柄(不動産投資信託証券)の取引に利用することができます。ただし、IPOの銘柄、POの銘柄、ライツ・オファリングの銘柄は対象外です。
PTS夜間取引
PTS夜間取引とは、証券取引所を介さずに株式を売買するための施設取引システムのことです(PTS=Proprietary Trading System)。
株式の取引は基本的に証券取引所が開いている時間帯に行われます。
しかしながら、証券取引所が開いていない夜間に取引を行いたい場合は、このPTS夜間取引を利用して取引をすることができます。
IPO取引とPO取引
IPO取引とは未上場企業が新しく上場する株式の取引のことです。
一方、PO取引とは、既に株式上場している企業が不特定多数の投資家に対して新発行の株式を発行する取引、または、既に発行済の株式について同じ条件で50人以上の投資家を相手に取得を勧める取引のことです。
ライツ・オファリング
上場会社が新たに発行する株式について、市場価格よりも安い価格で購入できる権利を既存株主に割り当てることを指します。今現在保有している株式数に応じて割り当てられます。
資金を拠出する証券口座の制限
楽天証券に開設した一般口座、特定口座、NISA口座から資金を拠出する取引に対して楽天スーパーポイントを利用できます。ただし、ジュニアNISA口座は対象外です。
ポイント利用の方法
投資の仕方に合わせて計画的なポイントの利用を可能とするため、ユーザーは「ポイントを無制限に利用可能」「1日単位で上限を設けて利用可能」「1ヶ月単位で上限を設けて利用可能」と3パターンのうちいずれかを設定することができます。
楽天証券での証券取引におけるポイント付与のルール
ユーザーが「超割コース ポイントプログラム」に申込みする場合、証券取引を実行する際の手数料に対して1%相当のポイントが付与されます。
なお、取引額が大きくなって大口取引条件を満たすと、付与されるポイントが2%に増えます。
2019年9月現在、1日ごとの取引手数料に対して1%がポイントバック(小数点以下切り上げ)されますが、10月1日以降は取引手数料100円につき1ポイント付与(小数点以下切り捨て)に変更されるので、注意が必要です。
なお、「超割コース ポイントプログラム」を利用可能なのは個人における利用のみで、法人での利用においてはポイント付与されません。
楽天証券の取引手数料
手数料コースに「超割コース」を利用する場合、現物取引手数料は50円~973円に設定されており、これは業界最低水準です。
その他のポイント付与サービス
証券口座の残高に応じたポイントの付与サービス
証券取引における楽天スーパーポイントの付与以外にも、楽天証券は月末の残高10万円ごとに4ポイントが付与されるサービスも展開しています。
iDeCoに連動したポイントの付与サービス
楽天証券はiDeCoにも対応しており、iDeCoの残高に応じて楽天スーパーポイントが付与されるサービスもあります。
楽天銀行との口座連携によるポイントの付与サービス
楽天証券に開設した証券口座と楽天銀行で開設した銀行口座とを連携することで、取引額または残高に応じた楽天スーパーポイントが付与されるサービスも展開されています。
この他、口座を連携すると銀行での振込手数料が無料になるなど優遇サービスがあります。
紹介制度によるポイントの付与サービス
楽天証券のユーザーが家族や友人を紹介することによって楽天スーパーポイントが貯まる紹介制度も展開されています。
楽天ポイント投資サービス導入の背景
楽天ポイント投資のサービスがスタートしたのは、2017年8月のこと。
ここからは、楽天のポイント投資サービスがスタートした背景について紹介していきましょう。
楽天証券の競合
インターネットで投資商品を購入できるオンライン証券会社は複数あります。
SBI証券・松井証券・マネックスグループ・カブドットコム証券などが、代表的な楽天証券の競合会社です。
なお、楽天証券の株式売買代金は、SBI証券に続く業界第2位となっています。
楽天証券は、証券取引に関するあらゆるサービスをスマホでできるようにしています。
競合各社もモバイルのアプリに対応はしていますが、アプリで取扱可能なサービスの幅広さでは、楽天証券が一番です。
なお、楽天証券のスマートフォンアプリは2018年3月時点で累計200万ダウンロードを超えています。
証券業界のトレンド
老後の備えとして2,000万円以上の貯金が必要というニュースが喧伝されていることもあってか、「投資に対するハードルを下げる」というスタンスは、業界全体の流れになっています。
株式の購入というのは、これまで数万円単位からしかできませんでしたが、この数年で初期投資に必要な金額が一気に下がってきています。
楽天証券では、今回リリースを発表したサービスの他にも、100円から投資信託を購入できるサービスを展開するなど、積極的に投資に対するハードルを下げるサービスを打ち出しています。
楽天グループでは、2017年8月に楽天ポイントで投資信託の購入が可能なサービスは既に始めていて、これも当時業界で初めてのサービスでした。
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楽天が展開している既存のポイント投資サービス
ここからは、楽天が提供している既存のポイント投資サービスについて紹介をしていきます。
楽天ポイントクラブ
楽天ポイントクラブは、楽天スーパーポイントを利用して資産運用の疑似体験ができるサービスで、2018年10月3日にスタートしました。
今回リリースされたサービスは、楽天スーパーポイントを使って株式などの運用資産を購入するものですが、楽天ポイントクラブは資産を購入するわけではなく、あくまでも「ポイントを運用する」だけのものなので、性質が異なります。
楽天ポイントクラブの概要
証券口座などの開設は不要で、スマホのアプリを通じて登録をするだけで始めることができます。登録後に投入する楽天スーパーポイントの数を決めると、楽天投信投資顧問株式会社が運用している投資信託の基準価額に連動して楽天スーパーポイントが増減します。
なお、楽天スーパーポイントは100ポイントから拠出可能で、後から運用するポイントを追加することもできます(上限あり)。
ユーザーがする必要があるのは、「アクティブコース」と「バランスコース」のどちらかを選択することだけです。
「アクティブコース」は積極的な運用を目指すもので、ポイントの増減幅が大きくなります。
一方、「バランスコース」は慎重な運用を目指すもので、「アクティブコース」と比較してポイントの増減幅が小さいです。
なお、楽天投信投資顧問がどのように投資信託を運用しているのか、投資信託の基準価額がいくらなのかはHPで確認することが可能です。
運用した結果次第で最初に投入した楽天スーパーポイントを割り込むことはあるものの、マイナスになることありません。
また、増えた楽天スーパーポイントは、1ポイント単位で引き出して利用することができます。
なお、ポイントの引き出しに際して手数料はかかりません。
楽天スーパーポイントを貯める方法
楽天スーパーポイントは、楽天市場で買い物をする、電子マネー「楽天Edy」を利用して買い物をする、その他楽天が展開しているサービスを利用する、提携店舗などで買い物をすることなどによって貯めることができます。
なお、ポイントカードを利用できる飲食店やコンビニなどは約200種類におよびます。
楽天スーパーポイントの有効期間
楽天スーパーポイントの有効期間はポイント獲得後1年間(通常ポイント)です。
ただし、期間内に1度でも新たにポイント獲得すれば、有効期限は最後のポイント獲得から1年後に更新されます。
ポイント利用で支払った代金も新たなポイント付与の対象となる
楽天スーパーポイントを利用して買い物をしたとしても、ポイントで支払った額も新たなポイント付与の対象となります。
つまり、買い物した代金の全額を楽天スーパーポイントで支払ったとしても、支払額に応じて新たにポイント付与されます。
楽天スーパーポイントのサービス利用者数
調査会社であるマイボイスコム株式会社が約10,800人を対象として2017年5月に実施した調査では、56.5%の人が楽天ポイントのサービスを利用している結果が出ています。
この調査結果から、楽天スーパーポイントは、ポイントサービスとして多くの支持を集めていることが伺えます。
まとめ
楽天スーパーポイントのほか、Tポイントなど買い物をして貯まるポイントで株式や投資信託といった投資商品を購入できるようになるなど、証券会社各社は投資に対するハードルを下げていくことを進めており、新規ユーザーの獲得を加速させています。
実際、スマホ一つで気軽に株式などの投資を始めることができる環境が整ってきており、フィンテック(=金融技術)の進化に伴い、この傾向は今後ますます加速していくものと思われます。
楽天スーパーポイントは提携店舗やサービスの多さからとても貯めやすいポイントなので、この機会に投資にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。